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金剛寺のお正月準備〜注連縄(しめなわ)づくり

こんにちは、こころです!今日は滋賀県守山市の守山念法寺に来ています。ここで総本山 金剛寺のお正月準備をすると聞いているのですが、どんな準備なんだろう?それに、どうして本山じゃなく守山念法寺でするのかな……?
やあ、こころちゃん。いろいろ疑問があるようじゃが、まず、今日何をするかというと、お正月用の注連縄をつくるんじゃ。拝殿前広場の大鳥居に大きな注連縄が張られているのをおぼえているかな。あの大注連縄をはじめ、本山のお堂やお社、霊木などに飾る注連縄を信徒が手づくりしているんじゃよ。
えっ!注連縄って手づくりしてるんですか?大鳥居の注連縄は知ってるけど、あんな大きな注連縄を信徒さんがつくっているなんてビックリです!でも、どうして本山の注連縄を守山念法寺でつくるんですか?
信徒宅でのご親教
守山布教所の前で
それには長い歴史があるんじゃ。昭和42年2月9日、開祖親先生が守山市に初親教され、滋賀県では初めての布教所が守山にできたんじゃ。その後、稲作が盛んな滋賀県なら注連縄の材料となる藁(わら)が手に入りやすいため、本山から注連縄づくりを依頼されたのが始まりで、それから約50年にわたって受け継がれてきたのじゃ。最初は大鳥居の大注連縄だけだったそうじゃが、本山の造営が進んで建物が増えるにつれて注連縄の数も年々増え、現在では、京都・舞鶴・福知山の念法寺と協力して、大小さまざまな注連縄をつくっておるんじゃよ。
へえー、注連縄って藁でつくるんですか……。50年も受け継がれているなんて、すごいですね!

まめ知識

どうしてお正月に注連縄を飾るのですか?
注連縄は「占縄、標縄」とも書き、神様の占有地であることを標示するためのもの。お正月に注連縄を飾るのは、新しい年の年神様をお迎えする清浄な場所を区切ってお示しするためなんじゃ。ちなみに、拝殿前広場の大鳥居は一般的な鳥居と違って2本の柱の間に注連縄が張ってあるじゃろ。これは「注連柱(しめばしら)」といって、鳥居の原型だといわれているんじゃ。

多くの人がコツコツ進める注連縄づくりの準備

注連縄づくりは、9月初めに材料の藁を集めるところから始まるのじゃが、実はそれが大変なんじゃ。長い注連縄をつくるためには、背が高いもち米の藁が大量に必要になる。しかし、背が高いもち米は台風に弱く育てにくいため、作付けする農家が減っていて、藁を分けてもらうのも一苦労なんじゃ。しかも「今日稲刈りだ」と連絡があると、その日のうちに田んぼに駆けつけねばならんから、人手を集めるのも大変なんじゃよ。
へえー、もち米の藁じゃないとダメなんだ。でも、どうしてすぐに駆け付けないといけないんですか?
集めた藁を、できるだけ早く乾燥させる必要があるからなんじゃ。注連縄には青々した藁を使うのじゃが、乾燥が遅れると黄色く変色してしまうんじゃよ。そこで守山では、50メートルのビニールハウス2張に2列ずつ棚を作り、藁を広げて乾燥させているんじゃが、藁が日焼けしないように遮光ネットをかけたり、毎日朝夕に藁を裏返してほぐしたり、とにかく手間がかかるんじゃ。
ええっ、50メートル!それが2張で、2段の棚が2列あって……。えーと、藁はどれくらいあるんだろう?
今年は、軽トラックの荷台に山盛り5台分の藁を集めたそうじゃよ。さて、乾燥できたら次は「はかま取り」じゃ。藁の根元には「はかま」と呼ばれる下葉が付いているんじゃが、これを1本1本丁寧に取り除かないと、いい材料にはならんのじゃ。同時に、汚れたものを除外したり、長さや色で選別したり、根気のいる作業をコツコツと続けていくんじゃ。
女性たちが集まって「はかま取り」をしていますね。作業は大変そうだけど、皆さん和気あいあいと楽しそう。
そして、選別したものを用途別に一定量ずつ束ねたら、今度は「藁叩き」じゃ。乾燥した藁は固いため、そのままでは注連縄にするのが難しい。そこで、木づちでまんべんなく叩いて、柔らかくしなやかにする必要があるんじゃ。藁がちょうどいい柔らかさになるように、叩く回数も決まっているというから驚くのぅ。こうした準備作業を、9月から11月にかけて地道に進めてきた最後の仕上げが、今日の大注連縄づくりなんじゃよ。

みんなが心ひとつにつくり上げる大注連縄

さあ、大注連縄づくりが始まりますぞ。大注連縄は、3本の太い縄をより合わせてつくるのじゃが、まず太い縄をつくるのが大仕事なんじゃ。芯になる縄のまわりに、藁の束をねじるように巻きつけながら、針金をぐるぐる巻いて締めつけていくのじゃが、藁を巻きつける人と針金を巻いて締めつける人が、あうんの呼吸で作業をしないとうまくいかない。まさに熟練の技とチームワークでつくり上げていくんじゃ。こうしてできた太い縄は、はみ出た藁の端を切る「ひげ切り」という作業で美しく整えて、いよいよみんなで大注連縄をより合わせますぞ!
うわー、続々と人が集まってきた!女性たちや小さい女の子もいるけど、こんなに太い縄なのに、力がない人でも大丈夫なのかなあ……。
こころちゃん、心配は無用じゃ。太い縄だからこそ、みんなで力を合わせ、心をひとつにして大注連縄をつくり上げるのじゃ。それ!よいしょ、よいしょ!最後に、金紙で巻いた雪洞(ぼんぼり)を等間隔に取り付けたら大注連縄の完成じゃ。
あっ!見覚えのある大注連縄になりましたね。いつもは高いところにあるから気づかなかったけど、こうして近くで見ると、すごく大きいですね!
完成した大注連縄と、霊木・六角堂・浄土門の注連縄を並べて、みんなで記念撮影じゃ。本山のお正月を飾る注連縄を無事完成させることができて、みんな晴れ晴れと喜びあふれる表情をしているのぅ。
毎年本山で見ている注連縄を、たくさんの信徒さんが3カ月にわたってコツコツと手間をかけ、思いを込めてつくっていることを初めて知りました。今度のお正月、本山に飾りつけられた注連縄を見たら、守山の方々の温かい笑顔が目に浮かぶんだろうなあ。皆さんも、ぜひ本山に初詣に行って、注連縄をチェックしてみてください。

インタビュー

守山念法寺 西田良伝住職

本山に注連縄を奉納させていただけることを、信徒さんは心から「ありがたい」と喜び、自主的にお寺に集まって作業を進めてくれるので、私もできるだけ手伝わせてもらっています。京都・舞鶴・福知山の念法寺と注連縄づくりを分担するようになってからは、互いに行き来も増え、お寺同士の交流も進みました。これからも4つの念法寺がしっかり連携することで、注連縄づくりに限らず、日々の活動もより活発にしていきたいと思います。

小谷正典さん

注連縄づくりは勘に頼る部分が多く、毎年同じようにつくるのは大変でした。それで、必要な藁の束数や重さを計って決め、データ化することにしたんです。習いたてのパソコンで図面を作ったり、作業の写真入りの記録を作って、誰が見てもわかりやすいように工夫しています。最近は、いろんな作業のムービーを撮ってパソコンで字幕を入れて、映像マニュアル作りにもチャレンジしているんですよ。

三田梨恵さん

お正月に注連縄が本山に飾られているのを見ると、あらためて「ありがたいな」と感じますし、注連縄づくりは特別なことなんだと実感しています。今年は、はかま取りや藁の選定に何度も参加させてもらい、注連縄づくりの一員になれたことが本当にうれしかったので、この喜びを同世代の人に伝えて、もっとたくさんの人に参加してもらえるようにしていきたいですね。