読込中

お父さん、好きです

M・M(60歳 女性 兵庫県)

病に苦しんだ幼少期の主人

私の主人は、古くからの念法信徒の家庭で育ちました。主人は元々は健康体でしたが、小学校3年生の時、ネフローゼを患って腎臓の機能が低下し、尿が出ずに体内に溜まってむくみ、ひとりではとても動けない状態になりました。あまりの辛さに「4年生までしか生きられないのかな」とご両親に話したこともあったのだとか。ご両親は胸を痛め、家の財産の一部を処分して高価な薬を求めたこともあったそうです。

中学生になってからも病状は思わしくなく、学校も休みがちで気持ちが沈む毎日だったそうです。思い悩んだお母さんが念法寺の住職先生に相談し、50日間お寺にこもって祈願する「参籠(さんろう)」をさせていただくと、主人は不思議な夢を見たり、体験したりしたそうです。

口にしてはいけない塩サバを……

お母さんは一緒に参籠し、朝晩は減塩食を用意するのですが、昼間は仕事でおられません。ある日の昼食のこと、食卓のおかずの中に塩サバがありました。腎臓病の人が絶対に口にしてはいけないものですが、住職先生が「仏様のお下がりだから何を食べても大丈夫。好きなものを食べなさい」とおっしゃったため、主人は塩サバを選んで食べたのだそうです。ところが、不思議なことに、その日を境に尿が出て体が楽になり、やがて自転車にも乗れるほど元気になりました。

その頃のお母さんは、「なんとしても学校に行かせてやりたい。元気になってほしい」と必死の思いで、掃除などの奉仕やお供養に一生懸命取り組み、主人を通して家族が信心を深めた時期だったそうです。

主人と始めた民宿「梅乃家」

それからは病気のことを忘れてしまうほど健康になり、学校を出てからは仕事にも恵まれた主人は、昭和48年に私と結婚しました。

その頃、世の中は民宿ブームでした。民宿を経営していた義父母に勧められ、私たちも昭和52年7月から民宿を始めました。民宿の名前は「梅乃家」です。親先生が直々に名付けてくださり、主人と2人で感激したことを、はっきりと覚えています。

最初、主人は会社勤めをしながらでしたが、3人目の子どもを授かる頃には会社を辞めて民宿に専念してくれました。また、子どもたちも成長すると積極的に手伝ってくれるようになりました。

主人の腎臓が悪化し人工透析に

その一方、主人はまた腎臓の具合が悪くなり、平成22年頃から食事療法を始めました。翌年、風邪をこじらせて寝込むと、日に日に容体が悪化。入院したところ、思いのほか深刻な状態で、人工透析を始めることになりました。1ヶ月後には退院できましたが、週に3日も人工透析に通わなければなりません。

それでも、主人が家にいて、息子たちも一緒に仕事をしてくれる毎日は、私にとっては嬉しい日々でした。人工透析も、通常は4〜5時間かかるところを、主人は3時間で済んでいました。透析は体への負担が大きいので、「これも仏様のおかげ。こんなに楽にしていただいてありがたい」と感謝させてもらっています。

教え実践ができていない私

思い起こせば、これまでご祈願を申し込んで仏様におすがりし、後押しをいただいて、幾度も困難を乗り越えさせていただきました。仏様のお力なくして、ここまでやってこられなかったと思えば思うほど、胸が痛みました。普段から、主人や家族に不満を抱き、教え実践ができていない自分を自覚していたからです。不満を抱いていると、言葉遣いや態度に表れたり、つい責める話し方になり、家の雰囲気も暗くなってしまいます。「これではいけない」と反省し、二代燈主様から教わった「朝の挨拶」や「握手の実践」を、形だけでもと何とかさせてもらっていましたが、「お父さん、好きです」と言うことができず、良心が咎めていました。

その間も、主人の病状は悪化の一途をたどり、私の苦悩は深まるばかりでした。

やっと言えた「お父さん、好きです」

そんな折、わが家で座談会を開かせていただきました。出席した皆さんからは「生活の中で教えを実践させてもらえば、仏様は必ず運命を切り替えてくださる」という体験を聞かせていただきました。そして、「なにか実践してみたらどうですか。仏様は間違いないのだから、自分が変わらせていただきましょう」と言われ、気持ちがスーッと楽になり、「実践させていただこう」という思いになりました。

私は「明日から主人に、朝の挨拶と握手、そして『お父さん、好きです』と言わせてもらいます」と約束しましたが、あくる日、どうしても言うことができませんでした。そこで改めて仏様にお願いし、勇気を出して主人にも「座談会で約束したので明日からさせてもらいます」と伝え、3日目にようやく「お父さん、好きです」と言うことができました。 主人は「わしもやで」と嬉しそうに返してくれました。

私は約束が果たせたことで心が楽になり、心の底から嬉しさが湧き上がってきました。

仏様のご存在を確信し幸せな毎日

それから4、5日経った頃でしょうか、人工透析から帰ってきた主人が「来週から週2日になった」と言いました。人工透析を受けて帰ってくると、何もできないほど大変ですし、一旦透析を始めると回数が減るということはとても珍しく、週1回減るだけでも主人にとっては本当にありがたいことです。私は、主人の体を楽にしていただいた嬉しさを感じるとともに、仏様のご存在を改めて確信し、喜びを感じました。

私たちの幸せを願ってくださっている仏様のみ心を深くわからせていただくと、教え実践が以前よりはかどるようになり、あまり不満を抱かなくなりました。すると、家庭の雰囲気が良くなり、毎日が楽しくて仕方がありません。私は本当に幸せです。