北方領土視察研修
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こころちゃん、よろしくお願いします。「北方領土視察研修」 も今日が5日目。研修生たちは、今日はこの納沙布岬で北方領土の視察と慰霊法要に参加します。
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この「北方領土視察研修」 は、そもそもどんな目的からはじめられたのですか?
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昭和60年から続いているこの視察研修旅行は、北海道における開祖親先生の足跡を訪ねるとともに、日本固有の領土である北方領土の歴史や問題を現地で学び、正しい理解を深めるべく行われてきました。7日間の旅行の間、研修生たちが寝食を共にし、語り合ったりして連帯感や協調性を楽しく学ぶ場でもあるのです。 その研修旅行も今回25回目を迎え、それを記念して納沙布岬の「四島(しま)のかけ橋」前で、「樺太・千島・北方四島殉難者慰霊法要」が行われます。
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研修生たちにとっては、領土問題を肌で感じる貴重な1週間なんですね。私も北方領土のことは、ニュースや新聞で見たことはありますが、あまり深く考えたことはありません。「北方領土返還」とよく聞きますが、もともと日本の領土だったのですか?
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そうなんです。島国である日本では、「領土」や「国境」といっても、あまりピンとこないのも無理ありません。私たちが一日も早く還ってくることを願い、ロシアに返還を要求している「北方領土」とは、歯舞(はぼまい)群島・色丹(しこたん)島・国後(くなしり)島・択捉(えとろふ)島の四つの島のことです。詳しくは「独立行政法人北方問題対策協会」をご覧ください。
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北方領土はもともと日本固有の領土であり、昔から多くの日本人が住み、生活をしていました。それが、先の大戦で日本は敗れ、終戦となった後もソ連軍は武力侵略を続け、四島は不当に占領されました。その時に多くの日本人が犠牲になりました。島で生活していた人たちも、住み慣れた故郷を強制的に奪われ、今では、日本の領土でありながら、日本人は一人も住んでいません。
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「四島のかけ橋」のシンボル像前に、多くの参拝者の方々が集まってきましたね。桶屋教務総長が導師を勤められ、慰霊法要がはじまりました。今日は、長谷川俊輔根室市長はじめ、約200名の方々が参列し、祈りを捧げています。
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こころちゃん、岬から歯舞群島が見えていますよ。今日は少しお天気が悪いので、かすんでいますが、うっすらと貝殻(かいがら)島や水晶(すいしょう)島が見えているでしょう。天気のいい日は、もっとはっきり見えるんですよ。
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
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そうですね。この岬から、歯舞群島の一番近い水晶島までは、たった3.7kmしか離れていないんですよ。でも、この海域にはロシアが一方的に引いた、目に見えない境界線があり、無許可でその線を越えて漁船を操業するとロシアの警備艇に拿捕(だほ)されてしまうんです。これは、事実上の国境と言ってもおかしくありません。ここからも、ロシアの監視塔が見えているでしょう。
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ここに立って見ているだけでも、なんとも言えない緊張感がありますね。日本の島々なのに、自由に島に渡ることも、漁をすることもできないなんて……。なんだか、悲しい現実ですね。
まめ知識
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この北海道の最北端の地に、念法眞教の記念碑があるって聞いたのですが本当ですか?
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地元根室の高校生や青年会議所の方々との懇談会
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私は今、研修生たちが宿泊しているホテルからすぐの、根室市総合文化会館に来ています。今夜はここで、地元の高校生や根室青年会議所のみなさんとの懇談会が開かれています。
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この懇親会では、ビザなし交流で色丹島などに渡った地元高校生たちや四島返還のための活動をされている方々の生のお話を聞いたり、体験を語ってもらったりします。毎回、活発な意見交換が繰り広げられるんですよ。
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みなさん、小グループに分かれて、真剣に意見交換されていますね。同じ世代の人たちの考えや体験を聞いたり、自分たちにできることは何だろうと考えることはとても大切なことなんですね。
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そうですね。終戦から現在までの長い年月の中で、当時の島での生活や様子を知っている人も、年々少なくなってきました。今では、地元の方でさえ、関心が薄れてきているのも事実です。そんな中で私たちは、北方領土の問題を地元の方々だけの問題としてではなく、日本人として事実をしっかり認識し、現地に立って肌で感じることがとても大切なのです。そして、この研修で感じたことや北方領土問題に対する正しい認識を友人や周りの人に広めていき、国を守り、国を愛する大きな力につながっていくことが、この研修の大きな目的であり、願いでもあるのです。
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そっかぁ……。私は今回のレポートで、初めて北方領土問題について多くを知りましたが、北海道の先に「日本」があることを決して忘れてはいけないですね。この先、北方領土の歴史や真実を知る人がどんどん少なくなってくるでしょうし、私たち若者が、もっと関心をもって行動していくことが大切ですね。一日も早い四島の返還を願っています。
インタビュー
神戸念法寺:平塚 志織 (18歳/高3)
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私は、この「北方領土視察研修」に参加したのは、今回で3回目です。はじめて参加したのが、今から2年前の高校1年生の時。 その時は、ただ親から参加を勧められるがままに、なんとなく参加したっていう感じでした。同じ年代の子達もたくさんいて、ほとんど、旅行気分のノリで楽しんでいました。そして去年は、はじめて参加した研修旅行がとても楽しかったので、「今年も行きたいっ!」と思って、自分から申し込みました。3回目の今回の研修旅行は、今までと違って楽しさだけじゃなく、北方領土のことを自分なりに考えることができたと思います。私たち若い世代が、この北方領土の現実を知って、真剣に考えないといけないなと感じることができました。
バスドライバー :長谷川 芳行(50歳)
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私は、今回25回を迎える「北方領土視察研修」のうち、これまで22回も研修生の皆さんを乗せるバスを運転させていただいています。長年、お手伝いさせて頂いていて、いつも感じることは、皆さん若いなりに研修を終える頃にはそれぞれに領土問題に対する考えを持って帰られるということです。この研修で念法眞教さんとご一緒させてもらう中で、私なりに考えさせられることがたくさんあり、北方領土の問題も良い方向へと進むことを願うばかりです。ぜひこれからも、この研修を続けていってほしいです。そして、私が元気な限り、お手伝いを続けさせて頂ければ嬉しいです。