桜咲く、総本山金剛寺
は~い、こころです。今日はポカポカして、なんて気持ちのいい天気なんでしょう!!まさに、お花見日和です。本山の桜も今が見頃とお聞きしたので、今回はその美しい春の風景をレポートしたいと思います。
こころちゃん、金剛寺へようこそ。今日は、春の金剛寺の見どころをたくさん紹介してしんぜよう。ゆっくり楽しんでいってくだされ。
春の花々に包まれて
正門をくぐり抜けて少し進むと、さっそく薄紅色の美しい並木が目に飛び込んできました。あの花は何かしら……?
あれは、桃の木じゃよ。春の花と言えば今ではすっかり「桜」が主役じゃが、「桃の花」は春の季語にもなっているように春を代表する花なのじゃ。花の薄紅色の鮮やかさは見事なもんじゃろ。
ほんとにきれい!それに、とてもお手入れが行き届いているんですね。桃の木の根元に咲いているチューリップもかわいい。色とりどりで、なんだか心がウキウキしちゃう。これ、みんなお寺の方がお手入れされているんですか?
ふむ、信徒の方々がご奉仕でお手入れに来てくださっとるんじゃよ。お陰さまで、本山や周囲の植木は年中季節の植物で美しく彩られておるよ。
あら?向こうの方に淡いピンクが広がっていますよ……いよいよ桜のお目見えです!うわぁ~!なんて美しい景色なんでしょう。桜に囲まれた拝殿は、なんとも穏やかな優しい雰囲気で、まるで別世界に来たみたい。
そうじゃろう。この風景を高いところから眺めると、桜の花がまるで雲のように広がって、まさに極楽浄土そのものなんじゃな。
こんなに見事な風景、私ひとりで見ているの、なんだかもったいない気がしてきちゃったな。
はっはっは……。では、来年はお友だちも連れてくるとよい。金剛寺では今年の春から、一般の方にもこの素晴らしい桜を楽しんで頂けるよう、桜の咲くこの時期に拝観の期間を設けることにしたんじゃよ。先日も、この桜を一目見ようと、たくさんの方々がお越しになって賑わっておったよ。
へぇー、そうなんですかぁ。それじゃあ、来年は私も家族やお友だちを連れて見に来ようかな。
自然の喜びを感じる心〜万葉欄間
ふぅ。今日はお日様にもたくさんあたって、なんだか汗をかいちゃった。
そうじゃなあ、そろそろ本堂の中で一休みするかな?ところで、こころちゃん、今日は春の美しい風景をたくさん楽しんでもらえたようじゃが、四季の中で一番好きな季節はいつかの?
そうですね……、海も山も楽しめる夏もいいし、紅葉のきれいな秋や、冬の雪景色も好きだけれど、やっぱり春が一番すきかな。草花もきれいだし、人との出会いもたくさんあるし。
なるほど。こころちゃんが、季節の移り変わりや人とのふれあいを楽しみにするように、昔の人々も季節の風物や人を思う気持ちに心を動かされ、それを歌に詠んだんじゃ。それが「万葉集」じゃな。
万葉集なら私も知っていますよ。学校の授業で習いました。日本最古の歌集ですよね。貴族から庶民に至るいろんな階層の人たちの歌が収められていて、とっても素朴でロマンチックですよね。
さよう。この金剛寺の拝殿には、その万葉集を形に表し、色に表した「万葉欄間」が納められておるんじゃよ。普段はなかなかお見せする機会がないのじゃが、今日は特別にちょっとだけお見せしよう。
これは、大伴家持(おおとものやかもち)が詠んだ春の歌じゃ。「春の苑(その)に、あたりが紅(くれない)に照り映えるように咲き誇る桃の花の、その美しさに照りかがやく 木陰の道に、花をめでて立つ乙女のあでやかな姿よ」という意味じゃよ。
うゎ~!とっても細かい装飾ですねぇ。これ、全部木を彫って作ったとは思えないほどの表現力!!何層にも重ねてあって、立体感があって、なんだかこの歌の世界に引き込まれるみたいです。あ、この歌、春の季語の「桃の花」が使われていますね。
ほう、よく覚えておったな。関心、関心。このようにして、万葉の人々は日本人の自然観や人生観を見事に歌に表したんじゃな。こころちゃんも、今日いろいろな景色を目にして感動したように、身の周りの自然に目を向けて何かを感じ取る感性を、いつまでも大切にのぅ。
ほんとうですね。なんだか、これからやってくる季節が、どれも楽しみになってきました。