置かれた立場で教え実践
N・A(30歳 男性 東京都) |
「厄介な部署に来た」と悩む日々
私は、コンピューター関係の会社でシステム開発の仕事をしています。
以前は、まわりの人に恵まれ、楽しい雰囲気の中で働いていましたが、今年の4月に部署替えがあり、職場環境が大きく変わりました。
新しい部署の上司は、人に対してとても厳しい女性で、時折ヒステリックになり、社内での評判もあまり良くありませんでした。
その上司のすぐ近くの席になったのですが、彼女はいつも誰かに怒鳴っていたり、まわりの人に不平・不満を言ったりしているため、同僚たちは「触らぬ神に祟りなし」という感じでした。
職場の雰囲気は暗く、とても閉鎖的で窮屈な感じがしました。
もともと自由にするのが好きな私は、「厄介な部署に来たな。前の部署はいい人ばかりだったのに、どうしてこんなところに配属されてしまったのだろう。念法では、『自分に釣り合ったものしかまわりに現れない』と聞いているから、自分に問題があるのだろうか」などと悩んでいました。
住職先生のご指導で勇気が湧いた
この悩みを念法寺の住職先生にお話しすると、「良かったね。菩薩行(ぼさつぎょう)をさせていただけるわね」とお言葉をくださいました。
最初は「悩んでいるのに『良かったね』とは、何だそりゃ?」と、おっしゃる意味がよく理解できませんでした。しかし、お話を聞くうちに、「暗い職場を明るくする修行を、仏様が用意してくださったのだ」と気付いたのです。
住職先生は、職場で教えの実践を徹底するようにとご指導くださいました。
このご指導のおかげで、自分が置かれた状況を「自分の成長のために仏様が用意してくださったチャンスである」と明るく受け止めることができ、現実に立ち向かう勇気が湧いてきました。
それからは、「挨拶・笑顔・返事」の三美人の教えや、「五つの言葉・五つの心」などの教えを徹底して実践していこうと意識しながら、仕事に取り組むことにしました。
変わらぬ上司に諦めかけた時
しかし、教えを実践しながら仕事に取り組んでも、上司の態度、振る舞いは変わりません。
上司からの指示や指導があると、口では「はい」と答えながら、心の中では「また、ややこしいこと言ってるよ」とか「そんなに僕の仕事が気に入らないなら自分ですればいいじゃん」などと、投げやりな受け止め方しかできずにいました。
上司から私へ、一方通行で表面的な関係の中、愚痴・不足の心が大きくなり、関係は一層ぎくしゃくしていきました。
そのうち「やっぱりこの人とは性格も仕事に対する考え方も合わないんだ。できればこれ以上、こんなややこしい人とは関わりたくない」とまで思うようになりました。
そんな時、念法のある座談会で聞いたお話が、私の思いを変えるきっかけになったのです。
思いを変え、自分から変わる
その時に聞いたお話は、「仏様はその人に必要な修行の環境を与えてくださいます。だから、相手を責めるのではなく、まず自分が教え実践に励むことが大切。自分の修行ができた時、自然と周囲の環境は変わってきます」という内容でした。
これを聞いて、すぐに浮かんだのが上司の顔でした。そして不思議と「あぁ、本当にそうだなぁ。あの人も、きっと苦しいんだろうな。かわいそうだな」と思えたのです。
そして「上司が少しでも楽しく仕事ができるように、まず自分から変わり、できることからさせてもらおう」と、思いを変えることができました。
そう思うと、自然とアイデアが湧いてくるもの。それまでメールだけで済ませていた仕事上の報告・連絡・相談を、忙しい上司のことを考え、紙にも印刷して手渡すようにしました。
また、一緒に外出する時には、駅から行き先までの地図を手渡すようにしたり、良くない報告をする時でも、話の中に笑顔で話せる話題を織り交ぜるなど、必要以上に上司を不安にさせないように気を付けるようにしたのです。
上司が悩みを相談してくれた!
そのように心がけていくうちに、少しずつ上司の私への対応が変わってきました。
「N君はいつも嬉しそうだね」と言ってくださり、仕事もうまく回るようになり、関係も良くなっていきました。
そして、ふとしたきっかけで、上司の悩みについて相談を持ちかけられました。
上司が一緒に仕事をしている他の社員との人間関係の悩み、さらには上司自身の今後に関する不安や悩みについて、お話を聞かせてもらうようになったのです。
上司の悩みはまだ解決していませんが、相談してもらえたことがとても嬉しく、上司とそのような関係になれたことに、仏様のおはたらきを強く感じずにはいられませんでした。
仏様のおはたらきを実感
そのように感じた理由は、私が上司を完全に受け入れているわけではないからです。関係が良くなった今でも、仕事のやり方や考え方に相容れない部分があります。
にも関わらず、壊れかけていた人間関係が修復でき、それまで以上の良い関係になれたのは、仏様のおはたらきがあったからこそだと思うのです。
壁にぶち当たって悩み、視野が狭まって、自分ではどうしてよいのか分からなくなるたびに、いつも仏様がおはたらきになり、視野を変えてくださっていたのです。
あらためて、仏様の寛大さ、懐の深さを感じるとともに、「仏様から見たら、自分も大切な存在なのだ」と実感できました。
このように、仏様のおはたらきを感じられるようになったことが嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいです。これからも、仏様のお役に立てるよう、多くの人の幸せのために生きる自分になれるよう、一歩一歩着実に成長していきたいと思っています。