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奉仕で変わった体と心

S・Y(23歳 男性 大阪府)

高校を中退し悶々とする日々

私は高校を1年生で中退しました。

入学当初から級友と折り合いがつかず、友人もできなかったため、学校が楽しくなく、精神的に苦しい毎日でした。

なんとか卒業したいと思っていたのですが、休みがちになり、最終的に出席日数が足りなくなったため、退学を決めました。

退学後、すぐに夜間の定時制高校に入りました。しかし、まわりの生徒が授業中も騒がしく、授業の内容は中学校で習うようなものばかりで、勉強に集中できるような状態ではありません。

自分の将来が見えず、人生に希望が持てない悶々とした日々を過ごしていました。

母の勧めで受けた青少年得度

そんな時、私は母に勧められるまま、何も考えずに青少年得度※を受けました。

それまでの私は、お寺といえば1月3日の初護摩供に家族と一緒に参拝する程度でしたから、得度を受けても形ばかりで、気持ちに変化はありません。

仏様の教えの実践に思いが及ぶこともなく、以前とほとんど変わらない生活を送り、将来に明るい展望を描けないまま、不安な日々を過ごしていました。

それでも、母がお寺で聞いてきた話をしてくれて、「感謝することが大事」だと聞かされていたので、「自分を変えたい。どうすれば感謝することができるのだろうか」と、自分なりに考えていました。

※得度授戒とは、仏様から戒律を授かり出家して僧になること。念法では在家のまま得度を受けて「心の出家」をすることができ、青少年を対象としたものが「青少年得度授戒」。

全身のアトピーに苦しむ

アトピーが悪化したのはその頃でした。

全身に症状が出て、常にかゆくて仕方ありません。一旦かゆみが治まっても、汗をかく程度の刺激でぶり返し、掻くと傷になり、さらにその傷がかゆくなるという悪循環でした。

医師から処方された薬を塗っても、気休め程度にしかならず、アトピーに良いと聞けば、漢方や椿油などいろいろ試しましたが、効き目はありません。鼻炎もひどくなり、いつも鼻が詰まって息苦しい状態でした。

また、不安になったり、腹を立てたりすると症状がいっそうひどくなります。

ひどくなると顔全体にアトピーが出て、自分の顔を見るのも嫌でした。そうなると人前に出るのが苦痛で、そのストレスからさらに症状が悪化してしまいます。

その頃の私は、人と関わることを避け、まわりから見ても話しかけづらい暗い雰囲気を出していたと思います。

奉仕に参加して体と心に変化が

そんな私に母が、本山での奉仕に参加するよう勧めてくれました。

本心では嫌だったのですが、つい「行く」と約束してしまったため、最初は2ヶ月に1回ほど、仕方なく行っていました。

ところが、奉仕に参加すると、まわりの方々は笑顔で接してくれますし、何かするたびに「ありがとう」とお礼を言ってくれます。体験談や奉仕の心得、念法の教えなどの話も聞かせてもらえます。

そういうことが重なるうちに、私は少しずつ仏様に心を向けるようになっていきました。

奉仕は力仕事がメインなので汗をかきましたが、不思議なことに奉仕のあとはアトピーの症状が治まっていました。また、心が洗われたようにスッキリして、気持ちも明るくなっていきました。

アトピーが出なくなった!

そんな経験をしながら、徐々に自分から求めて奉仕に参加するようになりました。

草刈りの奉仕や月例祭の出仕、行事の準備のお手伝いなど、いろいろ参加するうちに、立教祭の「お練り※」での傘持ちや、お護摩などのお役をいただくようにもなりました。

その頃になると、仏様への感謝の心から奉仕に参加するようになっていました。

そして、気が付くと、アトピーや鼻炎の症状が出なくなっていたのです。

長い間苦しんできたアトピーだったので、「また、ぶり返すのではないか」と不安でしたが、その後も症状は現れていません。

※「廿五菩薩お練り供養」。阿弥陀如来様が廿五菩薩を引き連れて来迎され、人々を極楽浄土へ導く様子をあらわして練り歩く行列。

理学療法士をめざして勉強

将来の展望も開けてきました。

何気ない会話に出てきた「理学療法士」に興味を覚えたのです。柔道をしていたので前々から人の体には関心があり、理学療法士なら人のお役にも立てると思いました。

自分で調べたり、病院で実際に仕事現場を見学したりするうちに、真剣にこの道を進もうと気持ちが固まりました。

そして、理学療法士の専門学校に入学するための勉強に本格的に取り組み、試験を受けましたが、その年は合格できずに浪人することになりました。

浪人中の1年間は、基礎的な勉強から始め、必死で勉強しました。

春と秋にある試験のたびに「進路が早く決まりますように」と願いを込めて、本山で入試合格祈願を申し込み、5校受験しましたが、1校も合格できませんでした。

仏様が選んでくださった学校へ

「この道もだめなのか」とあきらめの気持ちも出始めた時、まだ受験できる学校が目に留まりました。

この時、「ご祈願を申し込んでいるのだから、自分に合った学校を仏様が選んでくださるはず」と、仏様に任せきる心になり、焦りや不安もなく試験を受けることができました。

そして、入学試験に合格。4月に入学すると、自分に合っていると感じて、教わったことがスッと頭に入り、実際に生かすことができました。

勉強は難しく、1学年80人のうち、3年後に一緒に卒業できたのは30人ほどでしたが、試験ではいつも5番以内に入れるほどの好成績で、友人も多くできて楽しく過ごせました。

仏様が選んでくださった学校でなければ、これほど順調にはいかなかったと、本当に感謝しています。

これからは仏様のお手伝いを

その後、理学療法士の資格試験に合格し、現在勤めている病院に採用されて、私は社会人としての一歩を踏み出すことができました。

思い起こせば、高校を中退してアトピーに苦しみ、人生に希望が持てずに暗い顔をしていた、何事もうまくいかなかった日々が嘘のようです。

これから社会人としていろいろな試練にぶつかると思いますが、仏様に助けていただくだけでなく、教えを実践することで家庭や職場を明るく楽しくして、仏様のお手伝いができるように励んでいきたいと思います。